幻想漫画肉大山椒魚篇
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代打テキストというものを書くことにした。
書くことにしたものの。どうしたものか。
偽総研に相応しい文章というのは苦手だ。
何故か。
多少なりとも理屈ばっていたり知識を披露するようなタイプの文章というのは、
それなりに検証が必要だからだ。検索してすぐ判るようなことは、検索して
調べておく。自分が信じていた知識が正しいかどうか改めて調べておく。
具体的な数値や引用元を明らかにしておく。
それでいて誰でも知ってそうなことや、意外でもない当然の話ではテキストにならない。
アア面倒くさい。なんとなく正しいと思い込んでた知識を自慢げに書いて足元を
すくわれるようなツッコミを貰うのは、理屈/知識系の文章ではより一層恥ずかしい
だけでなく、作者自身の信用にもかかわってくる。厄介だ。
しかし代打テキスト。この文章が載るのも、最終的に話をまとめるのも、
偽総研であり、とくがわさんだ。
つまり
何を書いてもとくがわさんがケツをもってくれる
わけで。
ここは一つ、面倒くさいのでうろ覚え知識のまま一切検索も裏取りもせず、
テキトー知識を断言しながら書いてみる。いんちき臭いロジックのまま行ってみる。
フォローよろしく。
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ある日のチャットを発端に、オオサンショウウオを食ってみたいという話が
盛り上がった。最初は長野ではザザ虫を食うとかイナゴや蜂の子を食ったことが
あるとかないとか、スズメの焼き鳥はまさに姿焼きで、その上頭蓋骨をシャリシャリ
割って脳味噌のとろりとしたところを味わうというのは悪趣味この上ないとか、
そういったゲテモノ話の流れで、白土三平の漫画でオオサンショウウオを食う
シーンがあって自分も食べてみたいという話になった。
オオサンショウウオ、別名ハンザキ。半分に裂いても生きているという。
漫画では文字通り、半分に裂き、その肉を焼いて食べていた。
古い漫画らしく、省略された肉塊だからより想像力を掻き立てたのかもしれない。
天然記念物で決して食べられないという柵の向こうにあるから余計食べたくなるのかも
しれない。
けれどやっぱりオオサンショウウオというマテリアルが魅力的なんだと思う。
まず両生類だ。これだけで希少だ。山椒魚と蛙にイモリしか思いつかない。少ない。
人間に喩えるなら、哺乳類を黄色人種+黒人としよう。爬虫類は白人だ。
とすると、両生類はアボリジニ。それくらい数が少ない。
数が少ないマイノリティというといかにも虚弱なイメージだが、
オオサンショウウオはどうか。
実物を見た人間ならきっとこう思うはずだ。アレはワニだ。
静かに眠るようなオオサンショウウオの水槽を指でコンコン叩いてみるといい。
次の瞬間に、叩いていた指は無いだろう。
強靭な戦闘力だけではない。長寿でもある。百年は生きる。
亀並だ。オウム以上だ。
こんな長寿な生物は、他にいるだろうか。いまい。
人間が100年以上生きるといっても、知の集積による努力の成果にすぎない。
野生動物としての人間=まだ細々と自然の中で暮らしていたころの人間の
平均寿命など、三十数歳に過ぎない。それを考えると大したものだ。
生命のヒエラルキーのある意味頂点にたちながらこれほどの長命には驚嘆する。
コンコンと指で水槽を叩くと、なぜ反応するか書いてなかったね。
音に反応するのだ彼らは。音に噛み付いて生活しているといってもいい。何故か?
そう、お察しの通り。目が見えないのだ。生まれて2年ほど、目が見えるのだけども、
それから目が潰れ、以後闇の中に生きることになる。
何故か。知らない。知らないけど、ありえないでしょ、普通。
金持ちのぼんぼんが地位も何も捨てて乞食坊主になるかのような。
一休さんみたいですな。
つまりオオサンショウウオを食いたいと思うのは、神秘を食べたいのだ。
あやかりたいのだ。カニバリズムと発想は同じだ。
---ここからとくがわ---
オオサンショウウオ、学名Andrias japonicus、英名Giant
salamander。
サラマンダー、すなわち火の精霊である。しかもでかいってどういうことだオイ。
そもそもサラマンダーってのは冬眠中のサンショウウオを薪ごと火にくべたとき、
すぐに死なずに火の中でうごめいていたことからついた名らしい。
それの眷属がオオサンショウウオである。
体長は大型の成体で1mくらいだが、記録上は1.5mを上回るものも存在する。
きれいな川に主に生息し、日本以外には亜種はアメリカと中国に生息している。
生きた化石ともいわれ、数千万年にわたってほぼ姿を変えていない。
動物食で魚などを食べる。
動きは遅いようだが、その顎はきわめて頑丈で人間の指くらいなら
たやすく飛ばせる。一見のんびり暮らしてるように見えるが意外とワイルドである。
考えてみれば数億年にわたって生存してきたのだ。そんなにやわなわけがない。
オオサンショウウオの目が見えなくなるのは「別に必要ないから」だといわれている。
暗いところで生活している生物の目が退化することは結構知られている。
1800年代後半、シーボルトが日本にきたときにオオサンショウウオを持ち帰ったのだが、
持ち帰ったオオサンショウウオは50年程度生存したといわれている。
野生状態での寿命はいったい何年なのかは、正直わからない。
ひょっとしたら100年を超えるものもいる可能性は高い。
もっとも現在は環境の悪化で、巨大なオオサンショウウオはすっかり
姿を消してしまった。その一方、オオサンショウウオが水産資源に被害を
与えるという話まで言い出す者もいる。
きわめて少数しかいないオオサンショウウオがそんなに被害を与えるとは
思えないのだが。
いずれにしろ彼らにとっては住みにくい時代になった。
さて。オオサンショウウオ。食えるのはまあ食えるだろう。
しかし天然記念物の彼らは実際には(法の壁が邪魔して)食べられない。
そこで以前考えた食古生物学の知識を利用して、オオサンショウウオの味に
ついて検討してみることにしよう。
まず生物種的には両生類。両生類で食用に上るのはカエルが比較的に多い。
カエルの味は比較的鶏肉に近くさっぱり系らしい。
次に生活習慣を考える。肉食である。川に住んでいる。
そう、ワニに比較的近い生活習慣である。ということはワニの肉にも近い可能性が高い。
ワニの肉も割と鳥に近い風味だということだ。
以上から考えると、かなり鳥に近い風味の脂身の少ないさっぱりした味である
のではなかろうか。ささみ系の味であると推測できる。一種独特の風味も在るかも。
色もささみに近いような色あいじゃないかと。多分。
年代物のサンショウウオは熟成されて奥深い味わいとかあるかもしれない。
鳥でもブロイラーより地鶏だろやっぱ。
「料理長、このオオサンショウウオのムニエル、100年物か?」
「ええ、1905年物です」
そんな会話は現実には存在しないわけだが。
美味度:☆☆☆★★+α(カエルとワニ+α)
絶滅しなかったのは見た目のおかげと、隠れてすんでるって言う生態のおかげか。
井伏鱒二の山椒魚じゃないけどこっそりくらしてるってことだろう。
いろいろ言ってみたけれど、ここまで数億年生きてるオオサンショウウオなわけだ。
チャペックじゃないけど、最後に生き残るのは人類よりオオサンショウウオかもな。